ブラック・ジャック創作秘話』が大賞、だって?

確かに、面白い。面白いよ。

でもさ、これを一番に持ち上げちゃっていいのかな?

すでに評価が確定した、偉大な存在の伝記もの。

そんなのってもう、ある程度面白さが保証された予定調和でしかないじゃないか。

この漫画を推す背景って、

手塚治虫を褒めることでセンスいいと思われたい」

っていう下心しか見えてこないよ。

こういうやつらって

「ホメればセンスいいと思われる記号」を

収集して消費していくだけだからね。

いや、おっしゃるとおりかもしれません。
そのあと、歴代の「このマンガがすごい!」の受賞作をdisっておられます。それももっともかもしれません。読んだことのないのもあるから同意はしませんけど。

センスいいと思われたいだけのマンガ読みたちが、

過剰に持ち上げるからグズグズと引き伸ばされて

完成度はみるみる落ちて行って

どれも目も当てられない出来になっちゃってるじゃないか。

世の中には多分に「そういう」ために存在するものがあると思われます。
なんていうかな、賞レースや、その年のベストに奉るために作られた「問題作」や「野心作」。
それらは時代の徒花的なものがあります。なんたってディス・イヤーズ・モデルなわけなんだし。

一応聞いてみるけど、

当時『デトロイト・メタル・シティ』を褒めていたやつで、

いま大切な人、たとえば好きな人にさ、

「これ面白いから読みなよ」って

全巻プレゼントするぐらいの、それぐらいのこと、するの?

本当にその漫画が好きならできるはずだけど。

だから、この理屈は合ってるけど、まちがってもいるわけです。何年前か忘れましたけど、その年のベストには「デトロイト・メタル・シティ」がしっくりきていたワケですよ。
そしてそういうものほど、悲しいかな、時間と共に「ダサイ」と思われる率も高いわけです。
ま、フォローでもなんでもなく「デトロイト・メタル・シティ」を全巻プレゼントされたらちょっとうれしいよおれ。

そして。
そういうのとは別なところで、いつまでもオススメすべき、プレゼントされるべき「モノ」ってのも存在するわけですよ。いわゆるエバーグリーンなモノ。それこそ、上記の手塚治虫マンガとかね。手塚治虫氏は逆に「そういう」モノとして存在しつづける十字架を背負ってるわけです。夏目漱石とかそういうノリで。

と、でも、「このマンガがすごい!」みたいなものは多く存在すべきだし、それを「きっかけ」にして、たとえば、「花のズボラ飯」から「マコちゃん絵日記」や「孤独のグルメ」や「食の軍師」などにいったり、「ブラックジャック創作秘話」から「日本をゆっくり走ったよ」など手にとったりの「リンク」したり「展開」があるのはすごくステキなことだし、もちろん、ピンとこなかったり、disったりすることで「おれならもっとおもしろい**を推す」みたいなのに流れるもすごく意義があることと思いますよ。

つまり、「刺身のツマ」みたいなもんでもあるわけです。
ただ、刺身のツマで終わるような作品はなんやらかんやらいうて大賞にはならないと思うけどね。
それこそ自称「センスいい」と思ってる方もそれゆえに一生懸命なところがあるだろうし、「そいつらがまちがってる」と思うヒトが多いなら、そういうガイド本は売れなくなるわけだしなあ。

今年の「ブラックジャック創作秘話」も「花のズボラ飯」もなんていうか、オシャレなセンスのいいヒトがチョイスするマンガじゃないようなノリでおもしろいと思う。
そして、100%狙ってなかったろうなあ。

参照:
[「日本をゆっくり走ってみたよ〜あの娘のために日本一周〜」2巻 吉本浩二(双葉社): ポトチャリコミック]